2013年1月18日金曜日

古典的条件付け classical conditioning



概略


道具的条件付けオペラント条件付け)とともに2つの条件付けの型の一つ。
レスポンデント条件づけ、パブロフ型条件づけとも呼ばれる。

条件刺激(CS)の呈示後に無条件刺激(US)を対呈示することにより、条件反応(CR)を形成するもの。
ロシアの生理学者パブロフ(Pavlov,Ivan Petrovich)が発見・提唱し、彼のイヌの唾液条件づけは代表的実験である。
この反射づけは明るいところでは瞳孔が収縮したり、食べ物が口にはいうと唾液が分泌されるような、生まれつきの反射(生得的反射機構)に基づいており、
このような生まれつきの反射、無条件反射には各反射を誘発する刺激、無条件刺激が存在している。
条件刺激と無条件刺激の対呈示を繰り返す強化
古典的条件付けが成立した後で今度は条件刺激だけを提示して無条件刺激を呈示しないという手続きを繰り返すと、条件反応は次第に弱まり、最終的には反応しなくなる消去
消去の途中でしばらく休止期間をはさみ、それから改めて条件刺激を呈示すると、一時的に条件反応が回復する自発的回復などの手続きからなる。
この他にも手続き中のCSとUSの呈示する時間や順番を変化させることで、条件づけられる反応を変えることができ、同時条件づけ遅延条件づけ恐怖条件づけなどでより高次の条件付けがなされる。



定義

・条件刺激の呈示後に無条件刺激を対呈示することにより、条件反応を形成するもの。

もともとは反応と関係のない刺激が学習によって新しく反応を引き起こす力、ある特定の条件下で獲得された後天的な反射(条件反射)を持つようになるまでの手続きやその結果を古典的条件付けという。


提唱者
  ロシアの生理学者パブロフ(Pavlov,Ivan Petrovich 1928 ) 
     1904年に食物消化の神経機構の研究でノーベル生理学医学賞を受賞。
     また、唾液分泌に関する研究中、条件反射の現象を発見した。
  彼の研究は20世紀初期からのアメリカの行動主義心理学の発展に大きく貢献した。



パヴロフ型条件付けの発見から、パヴロフは環境と動作との反射的結合が必ずしも先天的に規定された経路によるものではなく,中枢神経機能によって変化し得ることを示した。

パヴロフ型条件づけは、後にスキナー道具的条件づけと区別するためにヒルガードが古典的条件づけと命名した。
この古典的条件づけを人間の行動変容に適用する研究が発展し,行動療法の基礎が形成された。
また,彼の条件反射説は行動主義心理学の提唱者ワトソンの説の展開において中心的役割を果たし,学習理論にも寄与した。

さらに彼は犬に行った視覚弁別実験において、弁別課題が難しく嫌悪刺激の電気ショックを受ける可能性が高まると、
弁別の成績が悪くなるだけでなく、吠えたり噛みついたりといった落ち着きのない異常状態が慢性的に持続することが観測された。
(中枢神経系の興奮を生ずる条件刺激と類似した抑制を生ずる条件刺激を呈示すると異常な反応を示した)
これを大脳の興奮と制止の混乱によるものであると考え、人間の神経症に類似した症状であることから、この状態を実験神経症と名付けた。
この発見は、臨床精神医学の分野にも大きな影響を与えた。



刺激と反応

 
 無条件刺激 UnConditioned Stimulus ; UCS or US
  条件刺激に続いて呈示される刺激。
  唾液条件付けでの食物、恐怖条件付けでの電撃など。

 無条件反応 UnConditioned Response ; UCR or UR
  無条件刺激の呈示に伴って生ずる反応。
  食物に対する唾液分泌や、電撃に対する心拍・皮膚電気反射(GSR)などの不随意反応。

 中性刺激 Neutral Stimulus ; NS
  現在問題にしている特定の反応はもたらさない、行動を誘発させない刺激。

 条件刺激 Conditioned Stimulus ; CS
  条件付けが行われる対象となる刺激。
  初めは何も反応を誘発しない刺激も、無条件刺激との対呈示を繰り返すことにより
  特定の反応を生じさせるようになる。

 条件反応 Conditioned Response ; CR
  条件刺激に誘発される反応。
  当初は認められないが、条件付けの進行に伴って生ずるようになる。

手続き


条件刺激(Conditioned Stimulus:CS)の呈示後に無条件刺激(UnConditioned Stimulus:UCS , US)をついとして呈示することにより、条件反応(Conditioned Response:CR)を形成する。


オペラント条件づけとの違い

古典的条付け
 行動・反応に関わらず条件刺激と無条件刺激が対になって呈示されることにより反応が誘発される。
 基本的に条件付けの前に反応が起こる必要はなく、対象となる反応は不随意的である。

オペラント条件付け
 自発的な何らかの行動・反応に強化子が与えられることにより、行動の頻度が変化する。
 基本的に条件付けの前に反応が起こる必要があり、その反応は随意的である。



古典的条件付けの操作

強化 reinforcement
 古典的条件付けにおいて条件刺激と無条件刺激を対にして提示することによって引き起こされる事態。
 その後ソーンダイク効果の法則の中で今日の強化の概念的基礎が形成されていった。

消去 extinction
 条件付けにより形成された反応が、もはや強化されないことにより、その成功が減衰していく過程、または手続きをさす(手続きは特に実験的消去 experimental extinction)。

自発的回復 spontaneous recovery
 条件づけられた反応を消去している最中にしばらく休止期間を入れると、その後一時的に反応郷土が多少回復する現象。

脱制止 dishibition
 通常の消去期間中や弁別負刺激呈示中に新奇刺激を呈示すると、低く抑えられていた反応強度が一時的に多少回復する現象。
 脱制止にも馴化があり、新奇刺激の提示が繰り返されると消失していく。


 自発的回復や脱制止は、単に条件付けを消していくだけのプロセスではなく、
   積極的に条件反応を抑制するプロセスであることを示している。



レスポンデント行動 respondent behavior
 スキナーは行動を二分法的に分類し、それぞれレスポンデント行動、オペラント行動と命名した。
レスポンデント行動は、特定の誘発刺激によって引き起こされる反応である。
何が誘発刺激であるかは、生得的に定まっている場合もあれば、学習される場合もある。



同時条件付け simultaneous conditioning

条件刺激の提示を開始してから、5秒以内の一定時間後に無条件刺激を提示し、さらに一定時間後に両刺激(CSとUS)を同時に終了させる置いう手続きを繰り返す。一般にCSとUSが正確に同時に開始され終了する場合には、条件付けは起こりにくいとされる、CSがUSにわずかな時間先行する手続きは、標準的手続きとされる。たとえば、空腹の犬に1分間に100回の速さで音を出すメトロノームを聞かせ始めると同時に、ほぼ30秒余りで食べおわる量のドッグフードを入れたエサ皿を前に提示する犬はすぐに食べ始めるが、当然それと同時に宇井駅分泌が生じる、ドッグフードを提示して30秒後に、メトロノームを止め、同時にエサ皿もひっこめ、5~6分間放置し、また同じ手順でメトロノーム音とドッグフードを対提示する。この手続きを毎日同じ水準の空腹状態にした犬に6回ずつを繰り返してから、5日間くらい続けると、犬は1分間に100回の速さでなるメトロノーム音を聞くだけで、唾液分泌を生ずるようになる。


遅延(延滞)条件づけ delayed conditioning

条件刺激の呈示開始に遅れて無条件刺激の呈示が始まるが、両者が同時に呈示されている期間が存在するものをいう。
条件刺激を呈示してから5秒以上の一定時間後に無条件刺激を呈示し、さらに一定時間後に両刺激を同時に終了させるのがこのタイプの基本型である。
多くの実験状況で条件反応の形成に最も適しているとされるのは、0.5秒ほどの遅延である。
同時条件付との主な違いは、無条件刺激の開始が、このタイプでは、条件刺激の開始より5秒以上遅れる点である。この点が守れているなら条件刺激の収量が、少なくとも無条件刺激の開始と同時であっても、遅延条件付けに含まれる。


痕跡条件付け trace conditioning

条件刺激の呈示が終了した後ある間隔をおいて無条件刺激の呈示が始まるもので、両者が同時に呈示されている時間は存在しない
形成される条件反応の開始時期も条件刺激呈示期に遅れる。
間隔があまりに長くなると条件付けは困難になっていく。
たとえば空腹の犬に、あらかじめ定めた音を40秒間聞かせ、続いてその音を停止し、120秒経過したと同時に、ドッグフードの入ったエサ皿を30秒間だけを提示するという手続きを繰り返して、音に膵液分泌を条件づけるなら、これは痕跡条件付けである。無条件刺激(ドッグフード)が提示されるときには、条件刺激(音)は提示されておらず、あるのは中枢神経系における条件刺激の痕跡であることから痕跡条件付けといわれる。


逆行条件付け backward conditioning

 通常とは逆に無条件刺激の開始が条件刺激の開始に先行するもので、条件付けは成立しないとされる。
条件付け実験の統制手続きとして用いられたこともあった。


時間条件反応 temporal conditioned response

 明確な条件刺激を与えないで、無条件刺激のみを一定時間間隔で与えると、ちょうど無条件刺激出現時間直前に条件反応が現れるようになる。
最終の無条件刺激からの経過時間の感覚が次の無条件刺激に対する条件刺激の役割を果たしていると考えられる。
たとえば空腹の犬に、25分おきに30秒間だけドッグ・フードを呈示することを繰り返していると、ドッグフードを与えなくても25分おきに膵液分泌が生ずるようになる。


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