2013年3月1日金曜日

応用行動分析 applied behavior analysis




概略

スキナー(Skinner,B.F.)による実験的行動分析で見出された変数を用いて、人間の問題行動の分析と修正を行う技法。
行動修正学と同義でも使われており、しばしば行動療法におけるオペラント条件付け療法の適用に関して用いられることがある。
主に三項強化随伴性のモデルにしたがって行動の連鎖を分析し、刺激と強化子を操作することによって行動の変容を目指す。



実験的行動分析

スキナーの提唱する徹底的行動主義に基づいて、行動分析が行われてきた。
科学としての行動分析は、有機体の行動の予測と制御を目標としており、観察可能な有機体の行動(従属変数)と外界の出来事(独立変数)の関係を明らかにしようとしている。
ラットやハトを被験体として動物実験の分野から始められた。



オペラント訓練

報酬訓練 reward training
一般に好ましい行動に対して正の強化を与える
 ex: トークン・エコノミー法

・離散施行型 discrete trial
 反応することが可能である施行(trial)と、反応することが不可能である施行間間隔(inter-trial interval ; ITI)が明確に分離されている
 ex:直線走路、問題箱、迷路、ラシュレー跳躍台、
   試行の明確化された強化スケジュールを用いた訓練など

・自由反応型 free operant
 試行が明確化されていない強化スケジュールを用いたオペラント条件付けの大部分が相当する。
 ex:スキナー箱を用いた訓練など、訓練の単位となる明確な思考というものは存在せず、つねに反応することが可能とされていることが多い


 
 
除去訓練 omission training
省略訓練とも訳され、好ましくない行動に対して正の強化を除去する
つまり、訓練期間中は、特定の望ましくない行動の生起がなければ報酬が与えられ、生起した際にはいっさい与えないようにする手続により、その生起を低め、最終的には消失させることを目的とする。
消去手続きとの相違点は、ターゲットとなる行動が生起しないことに対して報酬が与えられる点である。
代わりとなる適切な行動の生起頻度が高まるための訓練と併用することで行動変容の効果が高まる。
 
 
 
  ex: タイム・アウト法


逃避訓練  escape learning

オペラント条件付けの一種で、経験により、嫌悪刺激が呈示されてから逃避反応がなされるまでの反応潜時が短縮されていく学習過程のこと。
回避学習手続きと組み合わされて逃避・回避学習として検討されることが多いが、必ず嫌悪刺激呈示が伴う単独の逃避学習自体も用いられる。
逃避反応の潜時は一般に少数試行で急激に短縮するとされているが、種に特異的な防衛反応と大きく異なる反応が要求される場合には、この限りではない。


回避学習 avoidance learning

オペラント条件付けの一種で、経験により回避反応を形成させていくこと。
魚、鳥、哺乳類などで回避学習の研究が行われているが、求める回避反応が種に特異的な防衛反応と大きく異なる場合には学習が難しくなるとされている。
回避学習はいったん形成されると電撃を受けないまま長期にわたって反応が維持されるので理論的興味を呼び、二要因説(two-factor theory)などの理論が提出された。
実験例:ハードルで仕切られた二つの部屋の片方にラットを入れ、床から電撃を与えると、
     さまざまな反応の後にラットはもう一方の部屋に逃避する。
     電撃呈示前に警告信号として光刺激を呈示する手続きを繰り返すと、
     警告信号が呈示されると電撃呈示前に移動する(逃避する)ようになる。

トークン・エコノミー token economy



概略

行動療法の中のオペラント条件付け療法の一種。
望ましい行動をした患者に対し、正の強化子である代用貨幣のトークン(token)を与えることでその行動の強化増大を図る。
トークンが一定量に達すると、患者は特定の物品と交換できたり特定の活動を許されたりする。
このように、トークン・エコノミーは二次的強化の機能を果たす。
治療場面では一般にシェイピングの併用が効果的とされている。



参考

レスポンス・コスト法 response cost
 ある行動を行った際に、本来なら与えられるべき性の強化子を与えられない事態に遭遇すると、その行動をとる頻度が低下する、という原理を用いたオペラント条件付け療法の一種。
トークン・エコノミー法で条件性強化子となったトークンを取り上げることで嫌悪的な事態を与える。
有効に強化子を操作するための工夫である。