2013年2月1日金曜日
質問紙法 questionnaire method
概略
調査対象者や被験者に自らの属性、心理状態、行動傾向などを回答させる方法のうち、特に質問紙によって回答を求める方法。
特定個人を診断したり、特定集団あるいは人間の行動を理解するのに使用する。
後者のような研究目的で使用する場合は特に質問紙調査法と呼ばれる。
あらかじめ設定された選択肢のなかから回答する形式と、回答欄に自由に文章を記入する形式(自由回答法;free answer; open-ended question)とがあり、実験室実験、個別面接調査、集合調査、留置調査、郵送調査などにおいて用いられる。
質問の主文や選択肢のワーディング(wording;言い回し)が非常に重要で、不適切な用語法や偏向した文章があると誘導質問となってしまう。
そのため、予備テストを実施し、あいまいな言葉や専門用語、二重否定などによる難しい文章、キャリーオーバー効果(前の質問内容・存在が後続質問への回答に及ぼす影響)の有無、ダブルバーレル質問の存在などについてチェックする必要がある。
また、濾過質問(filter question)によって非該当者への質問を行わないような配慮も必要である。
回答者によって黙従傾向(yes-tendency; acquiescence)を示す場合がある。
語句説明
キャリーオーバー効果 carry-over effect
前の質問の内容・存在が後続質問への回答に及ぼす影響。
それまでの自分を肯定するかたちの言動を取りやすい傾向を指す。
ダブルバーレル質問 double-barreled question
2つの別の論点を含み、そのうちどちらが強調されているのかを回答者が識別できないような質問。
二重質問ともいう。
対象が複数あるパターンや、行動と動機のどちらを聞かれているのか区別できないパターンが代表的。
濾過質問 filter question
一般的な質問から徐々に調べたい質問に焦点をしぼっていく手法
黙従傾向 yes-tendency; acquiescence
質問内容とは無関係に反対より賛成(否定より肯定)を選択する傾向
定義
・調査対象者や被験者に自らの属性、心理状態、行動傾向などを回答させる方法のうち、特に質問紙によって回答を求める方法。
・構造化された質問項目に被験者が自ら答えていく方法。
特徴
長所
・低コストで、かつ実施が容易
・採点や結果の数量化が容易にできる
・結果の解釈に主観が入りにくい
・一度に多数の回答者を対象に実施可能
・回答が研究者(調査者)の存在による影響を受けにくい
・状況と行動を媒介する内的事柄に関する情報が得られる
短所
・質問項目に対する理解が被験者によって異なる可能性がある
・反応(回答)の歪曲が起こりやすい
・観察法に比べ言語以外の反応、回答状況、行動経過などを記録できない
・面接法に比べ対象や状況ごとに質問形式や内容を変化させることができない
・回答者の言語能力に依存する
調査方法
①郵送調査法
質問紙と返送用封筒を郵送して、一定期日までに回答を返送してもらう。
②留置調査法
戸別訪問をして質問紙を配布し、一定期日までに回答してもらい、回収にまわる。
③集合調査法
一定の場所に集合している対象者に質問紙を配布して説明し、その場で回答を求める。
④面接調査法
面接によって質問紙に従った質問をし、面接者が回答を記入する。
⑤電話調査法
対象者に電話して質問紙に従った質問を行い、回答を記入する。
種類 例
・矢田部=ギルフォード性格検査(Yatabe-Guilford Personality Inventory; Y-G性格検査)
12の下位尺度ごとに10問計120問の質問項目から構成される性格検査。
・ミネソタ多面人格目録(Minesota Multiphasic Personality Inventory; MMPI)
4妥当性尺度と10臨床尺度、550項目から構成される性格検査。
・顕在性不安尺度(Manifest Anxiety Scale; MAS)
MMPIのなかの50項目を選び出し作成した尺度。被験者の不安水準を測定する一般的な方法。
・モーズレイ性格検査(Maudsley Personality Inventory; MPI)
外向性‐内向性次元と情緒の安定性に関わる神経症傾向の二次元から測定される。全80項目。
・コーネル・メディカル・インデックス(Cornell Medical Index; CMI)
初診時に短時間で患者の状態を把握するための問診表として作成されたチェックリスト。
スクリーニングとして実施されることが多い。
・エゴグラム(egogram)
心のなかに親・大人・子どもの三つの自我状態の存在を仮定し、それによってパーソナリティの特徴をとらえることを目的とする。
東大式エゴグラム(TEG)など、いくつかの種類が開発されている。
・EPPS性格検査(Edwards Personal Preference Schedule)
マレーの欲求理論に基づき、その顕在性欲求リストを取り入れて作成した質問紙法性格検査。
社会的望ましさの程度がほぼ等価な2つの項目のうちいずれかを強制的に選択させる。
など
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