概略
ワトソンが提唱した現代心理学における基本的方法論の一つ。
科学的心理学とは行動の科学であり、その研究対象は客観的測定の不可能な意識ではなく直接観察可能な行動であり、その目的は刺激=反応関係における法則性の解明であるとする立場。ワトソンは、内観法による意識心理学を否定し、他の自然科学と方法論を共有するためには、心理学は客観的な行動を対象とするべきだと主張した。
この理論の背景にはダーウィンの進化論、パヴロフの条件反射説、デューイやエンジェルらの機能主義心理学の影響とされる。
また、行動主義では、心理学の目的は行動の予測と制御であるとされ、物理的刺激と個体の全体的活動の関係が研究された。
内省に頼らずに実験が行えるため、乳幼児や動物も等しく研究対象とすることが可能となり、学習理論の発達を導いた。
心理的現象を刺激と反応の分析単位(S-R)から探求する方法論的行動主義の流れは、刺激と反応の間に行動的な変数(媒介変数)を仮定する新行動主義へと発展した。
定義
心理学の研究法や説明に行動的な変数を用いることを求め、刺激と反応の関係における法則性の解明を目的とする立場。
提唱者
ワトソン(J.B.Watson)
行動主義の先駆者
パブロフ(Pavlov,I.P.)
古典的(レスポンデント)条件付け理論 提唱
ソーンダイク(Thorndike,E.L.)
道具的(オペラント)条件付け理論 提唱
ハル、トールマン、ガスリー、スキナーといった人物が独自の理論を展開し、発展させたものは
のちの新行動主義とよばれるものである。
行動理論 behavior theory
客観的に観察可能な行動のみを心理学の研究対象とすべきであるというワトソンの行動主義心理学は、心理学のおもな一研究分野をなすようになった。
おもに動物を被験体として、特に行動の学習メカニズムや学習現象について実験研究が進められ、さまざまな学習理論が提唱されるようになるが、
学習メカニズムを「刺激と反応の結びつき」で説明するワトソンの流れをくむS-R説(行動主義)と、
学習メカニズムをたんに刺激と反応の結びつきだけで説明するのでなく、そこに有機体内部の諸要因を組み入れるS-O-R説(新行動主義)といわれる学習理論の2つの考え方が展開されていった。
この一連の学習理論を行動理論という。
1970年代になり、バンデューラ(Bandura, A.)によって提唱された社会的学習理論は、認知要因を組み入れたきわめてすぐれた行動理論として従来の行動理論に影響を与え、現在では認知的要因を重視する行動理論が広く展開されつつある。
行動療法 behavior therapy
行動理論を理論的基盤として心理治療論と治療技法を展開したのが行動理論である。
精神分析理論の考え方、つまり「問題行動の根底に無意識な関与を仮定する」ことへの科学的実証性の疑問、そのことによる精神分析理論の妥当性への疑問、ひいてはその治療効果について疑問を投げかけた。
行動療法は、学習心理学の分野で実験などを通して構築されてきた学習理論を理論的基盤とする治療論と治療技法を提唱した。
定義は研究者により異なるが、共通する内容は「実験によって証明された現代学習理論あるいは行動理論の活用による行動変容法」である。
初期の行動療法は、行動理論(動物実験によって構築された学習理論)に基づいて体系化されたものであった。
1970年代以降、認知要因を重視する行動理論に影響を受け、認知行動療法へと展開していった。
・リンズリーら(Lindsley, O.R. et al.)
精神疾患患者の行動形成にオペラント条件付けの手続きを応用した研究報告を公表し、そのなかで行動療法という用語を初めて用いた。
・アイゼンク (Eysenck, H.J.)
様々な学習理論(行動理論)を応用した神経症や不適応行動の行動変容法を包含して、行動療法という語を用いた。
・ラザルス(Lazarus, A.A.)
治療の焦点を不適応行動そのものにおき、行動そのものを修正するということで行動療法という名称を用いた。
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