2013年2月19日火曜日
対象関係論 object relations theory
概略
精神分析理論の一つで、自我と対象の関係(内的対象関係)のあり方の特徴を重視して人間の精神現象を理解しようとする立場。
前エディプス期の段階での母子関係における自我の発達を対象関係として扱う理論である。
自我は本来、対象希求的なものであるとし、自我と対象との関わりを一義的なものとして考える。
乳児の内的対象関係は、自己と他者の区別のない自己愛的対象関係から、対象の一部を認識する部分的対象関係段階を経て、統合された全体的対象関係へと発展する。
そしてその段階に応じて対象との間にさまざまな不安を体験していく。
この理論をめぐって個人の現実適応を重視したA.フロイトらの自我心理学との論争が起こった。
対象関係論は原始的防衛機制に着目したM.クラインや、移行対象などの概念を提唱したD.W.ウィニコットらによって発展させられていった。
定義
前エディプス期の段階での母子関係における自我の発達を対象関係として扱う理論。
自我と対象の関係のあり方の特徴を重視して人間の精神現象を理解しようとする立場。
代表的人物
M.クライン Klein, Melanie
精神分析家で対象関係論の創始者。
S.フロイトの内在化の概念を発展させ、内的対象の概念を提唱し内的対象関係を重視した。
また、転移を内的世界の外在化としてとらえた。
妄想-分裂体制と抑うつ態勢の概念や、分裂機制による良い内的対象と悪い内的対象の分裂を提唱した。
前エディプス期における子どもの精神発達に焦点を当て、原始的防衛機制の解明に貢献し、
今日の対象関係論の発展の基盤を作った。
児童分析をめぐってA.フロイトと激しい論争を展開した。
D.W.ウィニコット Winnicott, D.M.
内的で主観的な世界と外的で客観的な環境要因とのかかわりを重視し、相互の橋渡しを軸とした概念や理論を展開し、抱える環境の失敗から精神病理を捉えた。
分離不安に対する防衛として移行対象の概念を提出し、移行対象を幼児の錯覚が脱錯覚されていく過程における代理的な満足対象として捉えた。
また抱える環境の失敗による不安が、子どもの本来の自発性と創造性を犠牲にする迎合的な偽りの自己を発達させることを明らかにした。
M.バリント Balint, M.
言語に古典的精神分析では扱うことが難しい、治療関係において原初的な母子関係が現れるクライエントの特性として基底欠損をあげ、主に境界例患者における対象関係の重要性を指摘した。
W.R.D.フェアバーン
⇒ウィニコットやフェアバーンは、A.フロイトとM.クラインの論争のどちら側にも積極的に味方をしなかったため、英国独立学派と呼ばれる。
key words
内的対象関係
外的な対象に加えて、個体の精神内界に形成される内的対象との間で発展する対象関係
妄想‐分裂態勢
堅固なナルシズムが支配的で、部分対象関係による妄想的不安と分裂機制が作動する状態。
内的対象は良い内的対象と悪い内的対象に分裂している。
抑うつ態勢
全体対象関係が成立して対象の価値を認める状態だが、そのために母親からの分裂に伴う不安が生じる。
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