ラベル 学派 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 学派 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2013年2月27日水曜日

ゲシュタルト / ゲシュタルト心理学 Gestalt / gestalt psychology



概略

ゲシュタルトとは、形態や姿を意味する言葉であるが、ゲシュタルト心理学においては、要素に還元できない、まとまりのある一つの全体がもつ構造特性を意味する。
知覚の全体性や場の理論を重視する立場である。
ウェルトハイマーを創始者としてドイツで誕生し、ヴントに代表される要素主義の考え方を否定した。
ウェルトハイマーは仮現運動の実験を通してゲシュタルトの考えを実証し、視野の中で対象が分離し、それらがまとまって群を作る体制化の過程、および分離や群化が簡潔・単純な方向に向かって起こるというプレグナンツの傾向が秩序ある知覚世界を成立せしめていることを図形例を用いて説いた。
ゲシュタルトの概念は知覚のみならず、記憶、思考、要求と行動、集団特性等、広く心的過程一般に適用された。




定義

要素に還元できない、一つの全体が持つ構造特性であるゲシュタルトの概念を媒介とした、物心一元論的現象学的心理学



代表人物

ウェルトハイマー Wertheimer,M.

ゲシュタルト心理学の創始者。
仮現運動の実験結果から、ゲシュタルトの考えを実証した。
さらに、視野の中で図と地が分化し、さらに図がまとまって群をつくる体制化の過程、およびそれらが簡潔・単純な方向に向かって起こるというプレグナンツの傾向が、秩序ある知覚世界を成立させていることを図形例を用いて説いた。


ケーラー Köhler,W.

ゲシュタルト心理学の中心人物の一人。
物理学の場理論に精通しており、ゲシュタルト性が心的現象ばかりでなく物理的世界にも存在し、
広い意味での物理法則が支配する中枢神経系と現象世界の間には対応関係が成立するはずであるとする心理物理同型説を展開し(1920)、後年、図形残効などの研究によってそれを支持する証拠を追及した。


コフカ Koffka,K.

ゲシュタルト心理学の中心人物の一人。
知覚―ゲシュタルト心理学序論』(1922) …ゲシュタルト理論を初めて紹介した論文
ゲシュタルト心理学の原理』(1935)…理論の体系化を目指した大著
 ⇒心理学を行動の科学とすること、心理物理同型説の立場をとるとはいえ、
   生理的対応過程の追求よりも現象ないし行動の世界の分析を重視するとした。
   その際、行動を刺激への反応の集合としてではなく、部分の変化が他のすべての部分に
   影響を与えるような力学的系としての場に依存して生じると考える。


レヴィン Lewin,K

物理的な環境とはなかば独立した心理学的な存在である生活空間の概念を用いて行動を理解しようとし、トポロジー心理学と呼ばれる力学的な理論を提起した。
場理論グループ・ダイナミックスの研究などが代表。


key words

ゲシュタルト gestalt

ドイツ語を語源とし、形態と訳される。
体制化された構造(organized structure)、要素に還元できない、一つの全体が持つ構造特性であり、集合体(aggregate)やたんなる総和(summation)とは区別されるものをいう。
体制化の結果を記述するのに用いられるだけでなく、過程そのものの構造的な特性をも示している。


プレグナンツの傾向 Prägnanztendenz

一般的にはプレグナンツの法則または原理と呼ばれる。
ウェルトハイマーが指摘した、体制化が簡潔・単純な方向に向かって起こる傾向をいう。
視野は全体として最も簡潔な、最も秩序あるまとまりをなそうとする傾向がある。
しかし簡潔でよい形(gute Gestalt)のまとまりとは必ずしも規則的や相称的を意味するものではなく、「知覚の体制化における単純で統一的な結果を実現させる傾向」を意味する。


仮現運動 apparent movement

物理的運動が存在しないにもかかわらず知覚される見かけの運動。
狭義には対象A、Bを適切な時間間隔をおいて、異なる地点に交互に呈示するとき知覚される対象の運動。
映画や踏切の警報器などで観察される。


要素主義 elementalism

心の世界を究極の構成要素に分解してその結合の法則を明らかにしようとする立場。
人間の心理現象は要素の総和によるものであり、視覚・聴覚などの刺激には、個々にその感覚や認識などが対応しているという考え。
ゲシュタルト心理学以前のすべての実験心理学がなんらかの意味で要素主義を暗黙の前提にしている。
意識心理学以外でも、パヴロフの条件反射学や行動主義の刺激反応学説(S-R説)など近代心理学の多くがこの立場である。



2013年2月19日火曜日

対象関係論 object relations theory



概略


精神分析理論の一つで、自我と対象の関係(内的対象関係)のあり方の特徴を重視して人間の精神現象を理解しようとする立場。
前エディプス期の段階での母子関係における自我の発達を対象関係として扱う理論である。
自我は本来、対象希求的なものであるとし、自我と対象との関わりを一義的なものとして考える。
乳児の内的対象関係は、自己と他者の区別のない自己愛的対象関係から、対象の一部を認識する部分的対象関係段階を経て、統合された全体的対象関係へと発展する。
そしてその段階に応じて対象との間にさまざまな不安を体験していく。
この理論をめぐって個人の現実適応を重視したA.フロイトらの自我心理学との論争が起こった。
対象関係論は原始的防衛機制に着目したM.クラインや、移行対象などの概念を提唱したD.W.ウィニコットらによって発展させられていった。




定義

前エディプス期の段階での母子関係における自我の発達を対象関係として扱う理論。
自我と対象の関係のあり方の特徴を重視して人間の精神現象を理解しようとする立場。



代表的人物

M.クライン Klein, Melanie

精神分析家で対象関係論の創始者。
S.フロイトの内在化の概念を発展させ、内的対象の概念を提唱し内的対象関係を重視した。
また、転移を内的世界の外在化としてとらえた。
妄想-分裂体制抑うつ態勢の概念や、分裂機制による良い内的対象と悪い内的対象の分裂を提唱した。
前エディプス期における子どもの精神発達に焦点を当て、原始的防衛機制の解明に貢献し、
今日の対象関係論の発展の基盤を作った。
児童分析をめぐってA.フロイトと激しい論争を展開した。


D.W.ウィニコット Winnicott, D.M.

内的で主観的な世界と外的で客観的な環境要因とのかかわりを重視し、相互の橋渡しを軸とした概念や理論を展開し、抱える環境の失敗から精神病理を捉えた。
分離不安に対する防衛として移行対象の概念を提出し、移行対象を幼児の錯覚が脱錯覚されていく過程における代理的な満足対象として捉えた。
また抱える環境の失敗による不安が、子どもの本来の自発性と創造性を犠牲にする迎合的な偽りの自己を発達させることを明らかにした。


M.バリント Balint, M.

言語に古典的精神分析では扱うことが難しい、治療関係において原初的な母子関係が現れるクライエントの特性として基底欠損をあげ、主に境界例患者における対象関係の重要性を指摘した。


W.R.D.フェアバーン

 ⇒ウィニコットやフェアバーンは、A.フロイトとM.クラインの論争のどちら側にも積極的に味方をしなかったため、英国独立学派と呼ばれる。



key words

内的対象関係
 外的な対象に加えて、個体の精神内界に形成される内的対象との間で発展する対象関係

妄想‐分裂態勢
 堅固なナルシズムが支配的で、部分対象関係による妄想的不安と分裂機制が作動する状態。
 内的対象は良い内的対象悪い内的対象に分裂している。

抑うつ態勢
 全体対象関係が成立して対象の価値を認める状態だが、そのために母親からの分裂に伴う不安が生じる。

2013年2月11日月曜日

人間性心理学 humanistic psychology


概略


人間を無意識に支配されているとする精神分析や、外的環境に支配されているとする行動主義に対して、人間を自由意志を持つ主体的な存在としてとらえる立場。
個人の独自性と自由性を重視し、個人への共感的関与を特徴とする。
アメリカでは1960年代以降、西海岸を中心にして急速に広まった。
マズロー(Maslow,A.H.)はこれを、精神分析と行動主義の二大勢力に対して第三勢力(の心理学)と呼んでいる。
人間性心理学に基づく心理療法はクライエントの主体性と自由を強調し、治療へのクライエントの責任を明確にし、それまでの心理療法各派への大きな影響を与えた。
実存主義的心理療法も人間性心理学として分類されることがある。



代表人物 例

 A.H.マズロー(Maslow,A.H.)
  自己実現の概念の提唱者。
  階層的動機論で自己実現欲求を明らかにし、欲求階層説を提唱した。
  また、人間性心理学の立場を第三勢力と呼んだ。

 C.R.ロジャーズ(Rogers,C.R.)
  クライエント中心療法の創始者。
  受容共感を重視した。

 A.アドラー(Adler,A)
  個人心理学の創始者。
  人間性心理学の立場の先駆者として、人間が主体的に決断しうる存在であることを強調した。

 V.E.フランクル(Frankl,V.E.)
  実存分析、およびロゴテラピー(Logotherapie)の提唱者。
  アウシュヴィッツの強制収容所における体験を著した『霧と夜』(1947)は名著と言われる。

 L.ビンスワンガー(Binswanger,Ludwig)
  現存在分析の創始者。
  人間は本来世界内存在、すなわち他との関係において初めて成り立つという人間観がある。

 E.T.ジェンドリン(Gendlin,E.T.)
  ロジャーズの弟子で、体験過程理論の概念の提唱者。
  体験過程とは、有機体内の感覚としては確かに感じ取れる心身未分化な体験の流れのこと。
  体験過程療法における主要技法にフォーカシングがある。

 J.L.モレノ(Moreno,J.L.)
  ソシオメトリーサイコドラマの創始者。

 F.S.パールズ(Perls,F.S.)
  ゲシュタルト療法の創始者。
  過去の体験や生育歴の探索ではなく、患者の「今、ここで」の体験と関係の全体性に重点を置く。


人間性心理学の基本的特徴

 ①人間性を全体的に理解する
 ②人間の直感的経験を重視する
 ③「今、ここ」で体験されるものや、個人にとって意味のあるものが重要である
 ④研究者もその場に共感的に関与する
 ⑤個人の独自性を中心におく
 ⑥過去や環境より価値や未来を重視する
 ⑦人間独自の特質、選択性、創造性、価値判断、自己実現を重視する
 ⑧人間の健康的で積極的な側面を強調する

                                など

これらの考え方は、健常者の人格成長や自己開発にも貢献しうる。
教育や成長を目的とした集団療法もこの流れをくむものが多い(エンカウンターグループなど)。

批判を受ける点

 ①知性を軽視し、感情を重視しすぎる
 ②自己決定の力が過度に強調されている
 ③科学的探究に対する不信と否定がみられる
 ④主観的現象を記述する概念の定義が不明確である
 ⑤共感的態度だけでは永続的な効果は望めないと考える
 ⑥人間の持つ悪や影の部分が見落とされる

                               など

人間性心理学に依拠した実践(療法

 Tグループ training group
  人間関係訓練の一つで、感受性訓練(sensitivity training ; ST)、
  ラボラトリー・トレーニング等とも呼ばれる。
   ・防衛機制の撤廃
   ・いま・ここ(here and now)の現実を生きることの体験
   ・現場への応用
              を目的とする

 エンカウンター・グループ encounter group
  自己成長を目指し、一時的に10人前後のグループを形成し、数日間合宿生活をする中で
  お互いの人間性をぶつけ合うような課題を経験する。


自己理論

 来談者中心療法を発展させたC.R.ロジャーズは、人間が本来的に持っている実現傾向、成長能力や適応能力を重視し、この発現を促進する条件としてカウンセリングやエンカウンター・グループにおける受容共感を重視した。
 ロジャーズの自己に関する理論は自己理論と呼ばれ、クライエントの不適応状態を理想自己現実自己のずれとしてとらえる。
 この両方の自己を受容しともに生きることでずれを解消する方向に向かう傾向を実現傾向と呼んだ。
*理想自己と現実自己の一致そのものではなく、両者が受容されることが重視される。

2013年2月8日金曜日

行動主義 behaviorism



概略
 
 ワトソンが提唱した現代心理学における基本的方法論の一つ。
科学的心理学とは行動の科学であり、その研究対象は客観的測定の不可能な意識ではなく直接観察可能な行動であり、その目的は刺激=反応関係における法則性の解明であるとする立場。
ワトソンは、内観法による意識心理学を否定し、他の自然科学と方法論を共有するためには、心理学は客観的な行動を対象とするべきだと主張した。
この理論の背景にはダーウィンの進化論パヴロフの条件反射説、デューイやエンジェルらの機能主義心理学の影響とされる。
また、行動主義では、心理学の目的は行動の予測と制御であるとされ、物理的刺激と個体の全体的活動の関係が研究された。
内省に頼らずに実験が行えるため、乳幼児や動物も等しく研究対象とすることが可能となり、学習理論の発達を導いた。
心理的現象を刺激と反応の分析単位(S-R)から探求する方法論的行動主義の流れは、刺激と反応の間に行動的な変数(媒介変数)を仮定する新行動主義へと発展した。


定義
 心理学の研究法や説明に行動的な変数を用いることを求め、刺激と反応の関係における法則性の解明を目的とする立場。


提唱者
 ワトソン(J.B.Watson)
 
行動主義の先駆者

 パブロフ(Pavlov,I.P.)
  古典的(レスポンデント)条件付け理論 提唱

 ソーンダイク(Thorndike,E.L.)
  道具的(オペラント)条件付け理論 提唱

ハルトールマンガスリースキナーといった人物が独自の理論を展開し、発展させたものは
のちの新行動主義とよばれるものである。


行動理論 behavior theory

 客観的に観察可能な行動のみを心理学の研究対象とすべきであるというワトソンの行動主義心理学は、心理学のおもな一研究分野をなすようになった。
おもに動物を被験体として、特に行動の学習メカニズムや学習現象について実験研究が進められ、さまざまな学習理論が提唱されるようになるが、
学習メカニズムを「刺激と反応の結びつき」で説明するワトソンの流れをくむS-R説(行動主義)と、
学習メカニズムをたんに刺激と反応の結びつきだけで説明するのでなく、そこに有機体内部の諸要因を組み入れるS-O-R説(新行動主義)といわれる学習理論の2つの考え方が展開されていった。
この一連の学習理論を行動理論という。

1970年代になり、バンデューラ(Bandura, A.)によって提唱された社会的学習理論は、認知要因を組み入れたきわめてすぐれた行動理論として従来の行動理論に影響を与え、現在では認知的要因を重視する行動理論が広く展開されつつある。



行動療法 behavior therapy

 行動理論を理論的基盤として心理治療論と治療技法を展開したのが行動理論である。
精神分析理論の考え方、つまり「問題行動の根底に無意識な関与を仮定する」ことへの科学的実証性の疑問、そのことによる精神分析理論の妥当性への疑問、ひいてはその治療効果について疑問を投げかけた。
行動療法は、学習心理学の分野で実験などを通して構築されてきた学習理論を理論的基盤とする治療論と治療技法を提唱した。
定義は研究者により異なるが、共通する内容は「実験によって証明された現代学習理論あるいは行動理論の活用による行動変容法」である。
初期の行動療法は、行動理論(動物実験によって構築された学習理論)に基づいて体系化されたものであった。
1970年代以降、認知要因を重視する行動理論に影響を受け、認知行動療法へと展開していった。

 ・リンズリーら(Lindsley, O.R. et al.)
  精神疾患患者の行動形成にオペラント条件付けの手続きを応用した研究報告を公表し、そのなかで行動療法という用語を初めて用いた。

 ・アイゼンク (Eysenck, H.J.)
  様々な学習理論(行動理論)を応用した神経症や不適応行動の行動変容法を包含して、行動療法という語を用いた。

 ・ラザルス(Lazarus, A.A.)
  治療の焦点を不適応行動そのものにおき、行動そのものを修正するということで行動療法という名称を用いた。

2013年2月6日水曜日

精神分析&精神分析療法 psychoanalysis & psychoanalytical therapy



概略


パーソナリティの機能および構造に関する理論であり、かつ特殊な心理療法的技法であって、この理論の他の学問への適応をも含むもの。
S.フロイトが創始した心理学理論であり、その理論に基づく心理療法であって、人間心理の研究方法でもある。
主要な理論として、局所論構造論力動論エネルギー経済論発達論適応論などがある。
特に局所論は精神分析学の基本であり、人間の行為の背景に無意識を想定するものである。
失錯行為や夢の内容、神経症症状などの精神現象は一見明確な原因がないようにみえるが、その原因が無意識内に存在するために意識からは因果関係がわからないだけである。
ゆえに精神分析では、意識に現れた事象を分析することで無意識にアクセスし、症状の原因を明確化することが治療機序となる。
また精神分析療法は、基本的には現在みられる心理的問題の背景に過去の発達段階で未解決な心的な問題が存在すると仮定する。
一般に夢や自由連想法によって得られた資料が分析の対象となり、防衛機制転移の解釈を通して無意識の自己理解をすすめる。
患者の健康な自我の主体性を期待し、適応ではなく、精神内界や人格の再構成を目標とする。




定義
精神分析についての定義は、研究者により異なる

 S.フロイト Freud, Sigmund (精神分析学の創始者)
  「(人の)内部に抑圧されている精神的なものを意識化する仕事」
    ⇒無意識の深層を研究する学問と定義

 A.フロイト Freud, Anna 
  「深層心理学すなわち精神分析ではなくイド自我超自我の三つの部分について完全な知識を得ることが精神分析の課題である」
  ⇒古典的な精神分析から自我心理学へ発展した証左
   対人関係論対象関係論へと発展

(国際精神分析学会第30回大会(1977)での定義)
  「パーソナリティの機能および構造に関する理論であり、かつ特殊な心理療法的技法であって、この理論のほかの学問への適応をも含むものである。この学問はジグムント・フロイトによる非常に重要な心理学的発見を基盤としている」




創始者

S.フロイト Freud, Sigmund(1856-1939)

 後に多くの分析家が独自の理論を展開、発展させていく。

 フロイトは神経学者シャルコー(Charcot, J.M.)ベルネーム(Bernheim, H.M.)のもとで研究を進めていたが、ヒステリー性の神経症状が催眠暗示によって消失することから、本人の意識されていない感情や欲求の存在を確信するし、カタルシスによる心理治療を行った。
しかし、「多くの神経症者はどんな方法によっても催眠されえない」という事実から、催眠とは違う新しい浄化法を考えることとなり、自由連想法が開発された。
さらに意識の統制が弱まる睡眠中の夢も無意識を知る素材を提供してくれるものとして、夢分析も重視された。



S.フロイトの主要な理論 (精神分析の基本的見地)
局所論
  心理的過程は意識、前意識、無意識からつくられているという考え
   意識 consciousness
    これは私の経験だと感じることのできること。意識内容は当人のみ経験する。

   前意識 preconscious
    意識されてはいないものの、思いだそうと注意を向ければ思いだせるもの。
    いつでも意識のなかに入り込める。

   無意識 unconscious
    現実には認めがたい欲望や感情、思考などが強く抑圧され意識には上がってこないもの。
    

構造論
  心を心的装置(超自我(スーパーエゴ)、自我(エゴ)、イド(エス))として捉える

   超自我 super ego
    良心あるいは道徳的禁止機能を果たす人間の精神分析構造の一部。
    快楽原則に従う本能的欲動を検閲し抑圧する。

   自我 ego
    認知、感情、行動などの精神諸機能を統制、統合する心的機関。意識の中心。

   イド id
    本能的性欲動(リビドー)の源泉。快楽原則に支配され、無意識的である。
    一次過程と呼ばれる非論理的で非現実的な思考や、不道徳で衝動的な行動をもたらす。

力動論
  さまざまな心理的現象は、心理的な力関係によって生み出される。

(エネルギー)経済論
  性的欲動である精神的エネルギー(リビドー)を仮定し、
  その充当や対象への分配などから種々の不適応や防衛機制を考える。

発達論
  自我、イド、超自我の相互関係やエネルギー分配の様態を
  幼児から成人へという発達の中で捉え、逆方向を退行と考える。

適応論
  対人関係や社会への適応という視点から心理学的現象を考える。



精神分析療法 psychoanalytical therapy

 S.フロイトの創始した心理療法であるが、広義には寝椅子や自由連想法などを採用しない、精神分析理論を援用した心理療法をも意味することもある。
浄化法カタルシス)から発展してきたもので、無意識的な存在と意識とを疎通させ、患者がこれまで行ってきた自動的な不快支配の結果拒否し(抑圧し)てきたもの(無意識的なもの)を、(意識化して)もっとよく洞察しようという動機にはげまされて、(抵抗を克服し)抑圧されたものを意識的に受け入れるようにそのような患者の変化を意図した治療法である。 
つまり、人間の心を理解しようとする治療法であり、人の感情や思考、行動などは無意識によって規定されていると考え、その無意識を意識化することで人を悩みから解放しようとする治療法である。
フロイトの精神分析療法は、その後の後継者によってさまざまに分岐していくが、基本的には現在みられる心理的問題の背景に、過去の発達段階で未解決な心的な問題が存在すると仮定する。
治療者との関係のなかで生じる感情転移や、抵抗を見出し、その解釈を通して患者の洞察を促す。
精神分析療法において、自由連想法を基本原則としており、治療者は、患者の話しに傾聴するとともに、中立性を保ちながら、患者の無意識についての理解(解釈)を伝えていく。
一般に夢や自由連想法によって得られた資料が分析の対象となり、防衛機制や転移の解釈を通して無意識の自己理解をすすめる。


自由連想法 free association

 フロイトが創始した精神分析の技法で、精神分析療法の基本である。
1890年代に無意識の探索手段としてそれまで用いていた催眠技法の代わりに患者に心の中に思い浮かぶことを自由に語らせる方法を採用した。
この手段は催眠にかからない患者へも適応しうるものであるが、通常患者は寝椅子に横になり、心に浮かぶこと(考え・記憶・感情など)を話すよう求められる。
そのときに語られる内容が分析の素材であり、患者の隠された無意識の現れとしている。
治療の過程で生じてくる抵抗転移に対し、治療者が技法的な中立性の立場で直面化、明確化、解釈を与えることにより、患者の洞察、無意識の意識化が得られるように促していく。



転移(感情転移) transference

 過去の体験が現在の人間関係のなかに反復強迫的に持ち越されること。
フロイトは、精神分析の面接過程が進むにつれて、患者が治療者に向ける肯定的・否定的感情(多くは患者が過去に誰か(多くは両親)に向けた、または向けることのできなかった感情)を治療者に置き換えて向けること転移と呼んだ。
転移は患者が持っている心理的問題と深い結びつきがあることが観察されたことから、その転移の出所と、かつて誰に向けたものであったかを解釈することで、治療的に活用できるとし、
フロイトは「転移という現象は精神分析療法中に必然的に生じる」と考えた。
また、転移によって患者が治療者に憎しみや敵意をいだく場合を陰性転移と呼び、一方で患者が治療者に好意や愛情を抱く場合のことを陽性転移と呼ぶ。
患者が幼児期の人間関係に由来した感情を治療者に向けるのが転移であるが、逆に治療者が同様な感情を患者に向ける場合を逆転移という。



リビドー libido

 人間に本来備わっている、性欲動を意味する精神エネルギーのこと。
このエネルギーが限局される身体部位によって口唇期、肛門期、男根期(エディプス期)、性器期といった心理=性的発達段階を唱えた。
なお、ユングの場合は性的なものではなく、活動源としての一般的な心的エネルギーを意味する。


夢分析 dream analysis

 フロイトは夢が主体の心理的世界をよく表していると考えて科学的な対象とした。
睡眠という意識の統制が弱まった状況下で抑圧されていた無意識が浮上してきたものであり、自由連想法とともに、「夢判断は無意識を知る王道である」とした。
そして、ばらばらでまとまりのない夢も実際はある意味を担っており、読解されるべき心理的現象であるとした。
また、夢は無意識的な願望充足であると考え、構成された夢(顕在的夢思考)から、夢の持つ隠された内容(潜在的夢思考)を引き出そうとした。
 一方,ユングの夢分析では、夢はを目的論的視点から理解しており、過去の妥協の産物としてよりも、ときには将来を示す集合的無意識からのメッセージとみなしている。



精神分析学から派生した諸学派


新フロイト派  neo-Freudian

 S.フロイトのリビドー論に拠った生物学的立場よりも、文化人類学やコミュニケーション理論の影響を受けた、社会的・文化的要因を重視した学派である。
フロム(E.Fromm)ホーナイ(K.Horney)サリヴァン(H.S.Sullivan)フロム-ライヒマン(Fromm-Reichmann, F.)など、1930年代から40年代にかけてのアメリカの一群の精神分析家たちをさす。
エディプス葛藤を認めない母系民族社会の存在を明らかにしてフロイトの汎性欲説の普遍性に疑問を投げかけたM.ミードなどの、文化人類学やコミュニケーション理論を援用しているところに特徴がある。
そのため、力動的・文化的精神分析学(dynamic-cultural psychoanalysis)と呼ばれている。
新フロイト派は、各人はフロイトの仮説に反対しているが、それぞれが強調する点が違い、また、ひとつの理論や技法に限定して縛らない点、違いを認めながらさらに理論を展開して統合する力を示している点などが特徴である。


個人心理学 individual psychology

 
 アドラー(Adler, A.)によって創始された心理学体系で精神分析の一派。
人格の全体性や社会的視点を重視した理論である。
S.フロイトが性欲を重視するのに対し、アドラーは劣等感(器官劣等)を重視した。
人間の基本的動機づけとして劣等感を補償するための権力への意思を強調し、人間を動かす根本的な欲求であると捉え、フロイトの性欲説を批判した。
また、フロイトが神経症の原因として過去の生活史に着目したのに対し、
アドラーは人間行為の目的性に注目し未来志向的観点から神経症を理解すべきだと主張した。


深層心理学 depth psychology

 より表層的な意識の部分と深層の無意識という精神の階層構造論の立場から、意識よりも無意識によって人間の行動が左右されているとみる立場。
特にユング(Jung, C.G.)が確立した分析心理学(ユング心理学)において、無意識は個人的無意識と集合的無意識(普遍的無意識)からなると主張し、集合的無意識における元型を重視した。
また、素質的な根本的態度の型である、内向―外向や、心理機能として思考―感情、感覚―直感を区別し、これらの組み合わせによる8つの類型から独自のタイプ論を展開した。


自我心理学 ego psychology

 S.フロイトが仮定した心的装置であるイド、自我、超自我のうち、特に自我の重要性を強調する学派。
ハルトマン(Hartmann, H.)E.H.エリクソン(E.H.Erikson)に代表される。
また、A.フロイトは防衛機制論を発展させ、自我の健康的な働きを強調して精神分析的自我心理学の基礎をつくり、さらに精神分析を子供に適用して遊戯療法の基礎をうちたてた。
新フロイト派の立場も取り入れたE.H.エリクソンはアイデンティティ理論を唱えた。


対象関係論 object relations theory

 個体の精神内界に形成される内的対象との間で発展する対象関係(内的対象関係)を重視する。
 自我と対象の関係のあり方の特徴を重視して人間の精神現象を理解しようとする立場。
つまり、対象を生物学的な本能充足の手段として理解するS.フロイト精神分析を基礎としたそれまでの立場に対し、自我は本来、対象希求的なものであるとし、自我と対象との関わりを一義的なものと考える立場である。
クライン(Klein, M.)ウィニコット(Winnicott, D.W.)ガントリップ(Guntrip, H.)らによって発展させられていった。